末広 (狂言) (Suehiro (The Fan of Felicity) (Kyogen))

末広(すえひろ)は狂言の演目のひとつ。
末広がり、末広かりとも呼ぶ。
脇狂言を代表する祝言曲目。
古い唐傘を末広がりの縁起物として売込みをかける詐欺師と思い込みの激しい太郎冠者のやり取りを謡う。
本来、末広とは銀杏の葉のような扇(中啓)を指す。

登場人物

能シテ:果報者
アド:太郎冠者
アド:売り子

あらすじ

天下は泰平の世にあって、そこかしこで大小様々な宴会が催されているような時代。
ある男(果報者)は、自分も親族一同を集め、宴会を計画し、その席で長老に対し末広(扇)を贈ろうと思いつく。
早速男は太郎冠者を呼びつけ、「良質な地紙で骨に磨きがかかり、戯れ絵が描かれている」末広を買い求めるよう命じた。
太郎冠者は末広が何か分からないまま都へ出で立ち、大通りで「末広を求める」と大声を張り上げる。
聞きつけた詐欺師(売り子)は自身の持っていた古ぼけた唐傘を取り出し、「これが末広である」と、売りつけようとする。
「紙と骨は良いが絵が無いではないか」と言う太郎冠者。
それに対し、「絵ではない、柄のことだ」と言いくるめる。
太郎冠者は喜び勇み、大金を支払い、傘を買った。
あまりの騙されぶりに居心地の悪くなった詐欺師は、帰路につこうとする太郎冠者を呼び止める。
「おまけをつけよう。」
「主の機嫌が悪い時に舞うと良い。」
こう言って囃子物を教示する。

太郎冠者が持ち帰った傘を見るや、男は激怒し、太郎冠者は自分が騙された事に気付く。
太郎冠者が詐欺師に教わった囃子を舞う。
すると男はたちまち機嫌を直し、太郎冠者と共に舞い、踊る。

[English Translation]